講義内容

道教医学・董氏奇穴針灸学に関する講習会のご案内/東京 自由が丘 7.23

2016年7月17日 前期洋クラス第4回

2016年7月17日 前期洋クラス第4回

1.基本の基本
①1つの病気に対して、どの経穴が効くのかを沢山知っていること。
②1つの経穴で治る病気を沢山しっていること

2.十二経の経穴の主治
⑴ 肺経
雲門:結核、重症の肺炎 ※雲門は経穴の始まるところ。終わるのは期門。
天府:救急(取穴は上腕を屈曲して鼻がつくところ)
 董師での救急の経穴は、天府の他に少府・梁丘
※龍門:人中、内関、足三里、湧泉(血圧が高い時だけ)
石坂流:中渚

尺沢:急性腹痛
孔最:痔(手関節横上方7寸)
列欠:呼吸器、偏頭痛、頚肩痛、任脈(不妊症)
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太淵:嗅覚異常、アレルギー性鼻炎
魚際:風邪による胃腸炎、手の公孫
少商:口鼻の炎症(急性)→刺絡 ※口鼻の疾患(慢性):関衝・少沢
鼻血(絡刺)
※目耳の炎症:商陽
※少商や商陽を刺してもなかなか治らない時は、合谷・足三里
急性の場合は、手足二金。


⑵ 大腸経
合谷・三間:五官、全身の痛み、腰痛、歯痛、頭皮針をする時
脳下垂体(+内関・人中)
→ 2穴同時に刺す(倒馬鍼)。
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※同じ横のラインにある経穴は、同じような効果がある。
ex.合谷⇔中渚、内関⇔支溝

曲池・手三里:皮膚病(+血海)、すべての表証
肩髃:上肢の疾患でなかなか治らない場合(火鍼)
〔経刺の場合〕 五十肩:肩髎への透刺  痺れ:直刺
※下肢の疾患でなかなか治らない場合は、風市。
迎香:乾性のニキビ(鼻に向けて横刺)
※湿性のニキビの場合は、細い針で火鍼(→耳背を刺絡した方が良い)。

⑶ 胃経
下関:三叉神経痛、顎関節症
承満(左):胃の疾患、二日酔い
梁門(右):十二指腸・肝臓・胆嚢・膵臓の疾患
天枢:消化不良、意識障害(+頭皮針・中脘・関元)
梁丘:救急、医原病(手術・注射の後遺症)、上半身を刺した場合の違和感を取り除く
王醫仙の臨床例:合谷を刺針したことによる後遺症の野球選手に、梁丘を刺して治った。
足三里:胃腸病、下半身、免疫
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条口:心肺の疾患、五官、肩
豊隆:列欠を刺す時に合わせる。
ex.冠状動脈、音が原因(上司にしかられてノイローゼ)、電気が原因(電気カーペットで寝て調子が悪い)
※去痰の経穴として有名だが、実際はあまり効果はない。

陥谷:消化不良、歯痛、鼻の病気、不妊症(よもぎ蒸し:宮廷の治療法)
内庭:口内炎、歯肉炎
※足の井穴は、炎症を起こしやすいので、使わない方がよい。


⑷ 脾経
公孫:衝脈(経血の血量の問題)検血異常、腫瘍、前身
※任脈:経血の周期の問題
三陰交:痹症(風・寒・湿)=違和感、生殖器・泌尿器
陰陵泉:消化器、肩、四肢、肉会穴、検血異常
血海:曲池と合わせて使う。皮膚病、すべての表症
①表症と裏証(その1)
〔表症〕皮毛と脈 〔裏症〕筋と骨 〔半表半裏〕肌肉

②表症と裏証(その2)
〔表症〕経絡の病:曲池・血海、大椎
〔裏症〕臓腑の病:内関・三陰交、大腿五穴、曲池・足三里、手足二金、
内三関、心関・肺関

③表症と裏証(その3)
〔表症〕急性 〔裏症〕慢性
大横(左):便秘  
※必ずしも教科書的な位置にあるわけではない。周辺の圧痛点を探す。
衝門:衝脈と関係がある。脳卒中
食竇:京門の上の圧痛点(灸)。救急、癌など延命治療

⑸ 心経
極泉:五十肩
少海:刺絡用の経穴
通里:透神門。心臓の病気、精神疾患による言語障害(ブツブツ喋る、喋らない)
※昔は心臓の病気には、内関は使わなかった。

陰郄:手の汗
神門:出血、精神疾患
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少府:医原病、下半身を刺した場合の針の違和感

⑹ 小腸経
後渓:後身、腎虚(小便異常)、腰痛(前屈すると痛い)
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〔腰痛の弁証〕
痛みが出る場合が
前屈:腎(後渓)
後屈:脾(合谷)
側屈:肝(中渚)

腕骨:黄疸、後渓と合わせる
養老:透間使。偏頭痛、神経症、疲れ
曲垣:疲れ
聴宮:中耳炎    
※聴会を使う場合は、脳卒中の時(耳門→聴宮→聴会という順番に、脳に近くなっていく)

⑺ 膀胱経
晴明:ぎっくり腰(朱砂を少しつける)、精神疾患(化け物を見た)
天柱:リウマチなどの免疫疾患(+志室)
風門:風邪
心兪・肺兪・肝兪・脾兪・腎兪:対応する五臓の病気
膈兪:血症
大腸兪:気症、坐骨神経痛
次髎:泌尿器、生殖器(卵巣・前立腺)
委中・委陽:腰痛、血郄、邪気過剰
承山:五十肩(透承山)
飛揚:頚の回旋障碍(透腎関or透条口)
束骨:足の後渓
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至陰:逆子

⑻ 腎経

湧泉:脳疾患

王醫仙の臨床例
小児麻痺で反応がまったくなかったが、4回の治療で動けるようになった。
百会、州火穴(健側)、人中、二谷、後渓、絶骨、湧泉、大椎・仙骨(刺絡)
※脳疾患には、内迎香も有効。

陰谷:≒龍門の血海

然谷:偏頭痛

照海:咽、生理がなかなか来ない(三陰交までのラインを刺絡)

太渓:幻聴
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復溜(+合谷):風邪による汗、目
※耳は、中渚・肝関
※斜刺の場合は、内三関と眼穴(火鍼)

兪府:リンパ腺・扁桃腺の腫れ(長野先生)
※外方に向けて横刺

2.足二金と外三関
足二金:外果と腓骨頭の中点の上下1寸
外三関:足の幅の真ん中のライン。腓骨上。


3.崑崙(龍門)
龍門鍼灸では、骨の盛り上がったところはすべて崑崙と呼ぶ。
なかなか治らない場合、外果と尺骨茎状突起に上方に向けて横刺。

4.易と肺経(経絡の流注が肺経から始まる理由)

①天は子の年に創られ、地(地球)は、丑の刻に創られ、人は寅の刻に作られた(天時于子、地時于丑、人時于寅)。

②卦序によると、1は乾(督脈と肺)。督脈は数えないので、肺が最初。

③人が生まれて初めてすることは、呼吸

5.陰陽五行  非公開


2016年7月3日 前期海クラス第4回

2016年7月3日 前期海クラス第4回

1.基本15穴の応用

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①体を前身、後身、側身の3つに分ける。仮に前身に病症があれば(ex.頭痛や胃痛)、列記されている経穴を刺す(◎がついている経穴が最重要穴)。
②子午流注に当てはまる経絡に属する経穴を治療する。

   ex1. 10時に来院した患者の場合は、脾経を治療する。

   ex2. 肺病の患者には、3:00~5:00の間に灸をしてもらう。

〔子午流注の応用〕
脳卒中の患者で厚苔の場合、胃か脾の時間に発症した可能性が高い。

⑴ 前身    
肺 列欠 3:00~5:00
大腸 合谷 5:00~7:00
胃 足三里 7:00~9:00
脾 ◎公孫 三陰交 陰陵泉 9:00~11:00

⑵ 後身
心     神門 11:00~13:00
小腸   ◎後渓 13:00~15:00
膀胱    委中 束骨 崑崙   15:00~17:00
腎 太渓 復溜 17:00~19:00

⑶ 側身
心包    内関   19:00~21:00
三焦    中渚 21:00~23:00
胆    ◎絶骨 23:00~1:00
肝     太衝 1:00~3:00

2.二十二門     非公開

3.反応点
皮膚上に反応点がある部位は、刺針ポイントとなる。具体的には以下3つ。
①浮絡  ②シミ ③できもの

4.五臓の四針
針の原点は、死背活用(スーベイホウヨン):暗記と臨機応変
例えば、必ず逆子には必ず至陰を使う。脈診や弁証から至陰は絶対に出てこない。この病症にはこの経穴、あの病症にはあの経穴という具合に暗記しなければならない。


〔死背〕
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⑴ 肝四針:中渚・公孫・肝門・肝関
⑵ 心四針〔循環器〕内関・三陰交・合谷・太衝
〔精神系〕内関・三陰交・神門・太渓
⑶ 脾四針:内関・公孫・腸門・足三里
⑷ 肺四針:列欠・照海・合谷・復溜
※ウイルス性の風邪は、二重・大腿肝穴
⑸ 腎四針〔生殖器〕列欠・公孫・中渚・三陰交
〔泌尿器〕内関・三陰交・中渚・肝関

〔活用〕
ex.突発性の味覚障害
→ 原因は精神的なストレス。感覚障害があるので、心四針〔精神系〕をアレンジする。
①内関 → 上腕心穴
②三陰交 → 腎関
③神門  → 神門自体の主治に味覚障害があるので、このまま。
④太渓  → 神門と最も相性が良い配穴なのでこのまま。
※上腕心穴・腎関の配穴は、不眠や強度の精神的なストレスに効く。


5.陰陽気血
Q:五臓の四針の他に、冷えの場合の陽の四針といったものはないのか?
A:陰証・陽証は、鍼灸と湯液では、内容が違う。


鍼灸 湯液

陰証 夜や午後に病症が悪くなる    下痢

陽証 昼や午前に病症が悪くなる 熱

冷え(下痢)があるなら。内関・公孫・腸門・六腑
熱があるなら、大椎を刺絡。
気証 病位が変化する  → 気は形がない → 灸・火鍼
血証 病位が変化しない → 血は形がある → 経刺・絡刺

気海・血海〔石坂流〕
王文明大師は、どのような患者にも、まず百会・気海・血海を刺針して、それから問診を行い、その症状に合わせた治療を行う。



2016年6月19日 前期洋クラス第3回

2016年6月19日 前期洋クラス第3回


1.標幽賦

①由是午前卯後,太陰生而疾溫。離左酉南,月朔死而速冷。

①午の刻より前、卯の刻より後(辰~巳の刻の時間)は、太陰が生まれるので(巳の刻に子午流注が太陰脾経になるので)、温の治療(補法)をすべきである。離(南=午)より左、酉の刻より南(申~酉の刻の時間)は、太陰が死ぬので(申、未の刻に子午流注が手足の太陽経になるので)、冷の治療(瀉法)をすべきである。

〔方位に関連した手技〕
南を向いた場合、
Ⓐ東から西に針を回す(太陽の動きと同じ方向:右に回す) → 気は下がる
Ⓑ西から東に針を回す(太陽の動きと逆の方向:左に回す) → 気は上がる

    ⇨左昇右降 ※これは補瀉の方法ではない。

例:心拍数や体温が高い場合 → Ⓐ
低い場合 → Ⓑ

②循捫彈努,留吸母而堅長。爪下伸提,疾呼子而虚短。

②循(針を上下に循環させる→雀啄術)、捫(針を捻る→回旋術・旋撚術)、彈努(弩)(針を弩弓のように弾く→振戦術)、留針(置針)、吸気の時に刺針、母(五行説での母を補う)、これらは(経気を)堅長(実長→補法)するための方法である。爪下(爪で皮膚に痕をつけて刺針する)、伸堤(運動鍼)、疾(即刺即抜)、呼(呼気の時に刺針する)、子(五行説での子を瀉法する)、これらは(経気を)虚短(瀉法)するための方法である。

※努=弩の説あり。
※留⇔疾、吸⇔吐、母⇔子、長⇔短と、前後の文章で相対的な意味の語句を使っているので、「堅」は、「虚」の相対の意味の語句=実との説あり。

〔呼吸による補瀉〕
息を吐いた時に刺針 → さらに深く刺す   →補法 ⇨ 呼進補
息を吸った時に刺針 → 針を浅い位置に戻す →瀉法 ⇨ 吸退瀉
→ 原文では「呼:瀉法、吸:補法」となっているがこれが、これは誤りである。
〔爪に関する手技〕
Ⓐ爪で後をつける場合は、経絡に対して垂直になるようにする。
Ⓑ爪による補瀉
針柄を針柄から針尖方向に爪で9回こする → 補法
針柄を針尖から針柄方向に爪で6回こする  → 瀉法

③動退空歇,迎奪右而瀉涼。推內進搓,隨濟左而補暖。

③動退(刺針後、針を揺り動かし、針を少しだけ引き)、空歇(手を離して置針する)、迎奪右(右方向に針を回旋して邪気を奪う)、これらは瀉法である。推內進(針を刺入して)、搓(両手を合わせて擦るようにゆっくりと針を回旋する)、隨濟左(左方向に針を回旋して正気を救済する)、これらは補法である。

※①で述べたように、右回旋、左回旋は補瀉の方法ではない。

④慎之!大患危疾,色脈不順而莫針。寒熱風陰,飢飽醉勞而切忌。

④病状が重症・危篤の場合は注意せよ!形色(顔色)や脈を診察しないのであれば、針をすべきではない。寒い時、暑い時、風が強い時、陰雨(しとしとと降る陰気な雨)の時、餓えている時、腹いっぱい食べている時、酔っぱらっている時、疲れている時も、針をするのは禁忌である。

※「陰」は、天気が良くない、陰証、お化けなどの意味がある。

⑤望不補而晦不瀉,弦不奪而朔不濟。

⑤望(毎月15日)には、補法をしてはいけない。晦(毎月30日)には、瀉法をしてはいけない。上弦(7,8日)下弦(22,23日)には奪(瀉法)をしてはいけない。朔(毎月初日)には濟(補法)をしてはいけない。

⑥精其心而窮其法,無灸艾而壞其肌。正其理而求其原,免投針而失其位。

⑥灸の核心に精通し、その方法を窮めれば、灸によって人の肌を傷つけることは無い。針の道理を正し、病の原因を追求すれば、針をあきらめ投げ出し、刺針する位置を失うことを免れることができる。




⑦避灸處而和四肢,四十有九。禁刺處而除六俞,二十有二。

⑦禁灸穴は、禁灸穴歌(45穴)に、四肢(の井穴4穴)を加えて、49穴ある。禁針穴は、禁針穴歌(31穴)から、六腑の兪穴(経穴)を除いて、22穴ある。

※禁灸穴歌、禁針穴歌ともに、鍼灸大成に収録されている。昔は色々な理論や伝説により、禁灸穴・禁針穴があったが、無視してよい。むしろこれらの禁忌を破った方が効果があったりする。

⑧抑又聞,高皇抱疾未瘥,李氏針巨闕而後蘇;太子暴死為厥,越人針維會而複醒。

⑧そして又、聞くところによると、高皇(金の皇帝:完顔旻)が病気になって未だ癒えぬところ、李氏が巨闕に針して、後に蘇らせ、太子(虢国の太子)が突然死にかけた時、越人(扁鵲)は維會(三陽五会=百会)に針して蘇らせた。

※李氏=竇漢卿の師:李浩との説があるが、時代が合わない。

意識障害:頭皮針+腹針
          →腹針は、中脘・関元・天枢も有効。

⑨肩井、曲池,甄權刺臂痛而複射。懸鐘、環跳,華佗刺躄足而立行。
⑨甄權(隋・唐の時代)は、上腕痛に肩井と曲池を刺して、また再び弓矢を射ることが出来るようにした。華佗は歩行不能に懸鐘と環跳を刺して、歩行可能にした。

※肩井は肩髃の間違い。肩井では治らない。

上肢:肩周辺 + 曲池
下肢:臀部周辺 + 絶骨

⑩秋夫針腰兪而鬼免沉痾。王纂針交兪而妖精立出。

⑩徐秋夫(南北時代)は、腰兪に針をして、鬼(病魔)から免れさせて、沉(重く)痾(こじれて長くなった)腰痛を治した。王纂(南北時代)は、交兪(人中・三陰交)に針して、病女を妖精(仙女)のようにした。

※交兪=仙骨部と解釈した方が良い。 仙骨部は精神疾患にも効く。
⑪刺肝兪與命門,使瞽士視秋毫之末。取少陽與交別,俾聾夫聽夏蚋之聲。

⑪肝兪と命門は、瞽士(目が視えない人)を、秋毫(秋に抜け替わった、獣のきわめて細い毛)の末端まで視えるようにすることが出来る。手足の少陽経の交会穴である翳風、角孫、外関を取れば、聾夫(耳が聴こえない人)を、夏のブユの声を聞こえるようにすることができる。

※目の治療に使うのであるから、督脈の命門ではなくて、霊枢:根結篇の「命門者、目也」すなわち晴明との説あり。

※前後の文章は対になっているので、「少陽」=胆兪と解釈した方が良い。「交別」は、晴明に対比して、翳風と解釈した方が良い。

五管:脊椎(督脈と膀胱経一行線)

⑫嗟夫!去聖逾遠,此道漸墜。或不得意而散其學,或衒其能而犯禁忌。

⑫ああ!古の聖人のレベルからより一層離れていき、鍼灸の道は少しずつレベルが墜ちていく。或は、不得意になり、学問が散逸していき、或は、余計な技能や禁忌を犯すようになっていく。

※「逾」→「愈」(より一層、ますます)の誤字との説あり。
「衒」→「衍」(余計な)の誤字との説あり。

⑬愚庸志淺,難契於玄言。至道淵深,得之者有幾。

⑬平凡で愚かで低い志の者は、この深奥な文章を理解し難いであろう 。鍼灸の道は深淵で、モノにできる者は何人いるであろうか。

⑭偶述斯言,不敢示諸明達者焉,庶幾乎童蒙之心啓。

⑭偶然このようなことを記述したが、明達(賢くて物の道理に通じていること )の者(=達人)にこれを示すのは恐れ入るが、童蒙(幼くて道理が分からないこと)の者(=初心者)にとって鍼灸の核心を切り開くものであることを心から願う。

2.透針

①風池双透
〔主治〕頚の回旋障碍(+二重)※前屈後屈障碍にはあまり効果はない。
脳卒中で涎が止まらない
     咳・吐き気
         ・右が悪い場合は、左の風池から刺針する。
           ・左右二穴に二本刺すよりも効果がある。

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②天髎透曲垣 〔主治〕疲れ (+大椎・定喘・身柱)

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③液門透中渚  〔主治〕疲れ
            眠気(+人中)

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低体温
鍼治療の効き目が出ない時(身柱と同じ効果)

④養老透間使 〔主治〕偏頭痛・神経症
     ※台湾の古典派はどんな病気もまずこれを刺す。

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⑤肘髎透曲池  〔主治〕膝痛(足三里や膝蓋骨尖付近の痛み)

            手の痛み・手の麻痺
※膝の痛み
                 ※膝の痛みは肘を、肘の痛みには膝を治療する。

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⑥条口透承山  〔主治〕五十肩
       ※遠位配穴の場合は健側を刺針するのが原則だが、条口・絶骨は、患側を刺針する。
※王家の承山は、下体の上1/3のところに取穴する。

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⑦気血二海(王家) 〔主治〕すべての虚証・実証、膝痛
右脚→肺(気):気海から透刺
               左脚→心(血):血海から透刺
       ※必ずしも厳守する必要はない。
 ※王法明大師は透刺でなく、左右計4穴刺す。どのような患者でもまずこの4本を刺針する。

⑧飛揚透条口(王家) 〔主治〕五十肩
※飛揚は承山の外側1寸。
※健側を刺針する。
※飛揚透腎関でも良い

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3.外気と針
①調気  針気合一
         手技により針を上下左右に動かして、針と気を合わせる
②得気 気至病所
         気が病のある所に流れることにより、体質が改善、病状が消失する
③行気 病歴長い→ 虚証 → 補法
短い→ 実証 → 瀉法

4.眼針   非公開

5.王家太極大接経   非公開

6.相生・相克関係による配穴  非公開








2016年6月5日 前期海クラス第3回

2016年6月5日 前期海クラス第3回

1.婦科疾患

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⑴ 主穴
百会
列欠・公孫・中渚・三陰交(生殖器の腎四針)
婦科穴・環巣穴

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列欠:任脈、経血の周期の問題
公孫:衝脈、経血の量の問題
中渚:腎(①少陰・少陽②中渚の裏は少府(少陰※)③腎兪や命門と同じ効果)
三陰交:脾・肝・腎

※少陰(心と腎)は、心系に集まる。
太陰(脾と肺)は、肺系に集まる。
厥陰(心包と肝)は、心包系に集まる。

〔応用:正治と奇治〕
正治で病気が治らない時は、奇治で治療する。すなわち、主穴を刺針しても効果がいまいちの場合、解剖学的に相応の部位を刺針する。
列欠 → 六腑
公孫 → 魚際
中渚 → 足臨泣
三陰交 → 内関


⑵ 要穴
①大腿五穴

大腿心穴   妊娠中の疾患(つわり等)
大腿肝穴   女性器の腫瘍
大腿脾穴   先天性の疾患(先天的に卵子を作れない)
       董師の考え方:先天性の疾患(腎)は後天(脾)で治療する。
大腿肺穴   女性ホルモンのバランス異常
大腿腎穴 習慣性流産(+絶骨に灸)

②肩中穴 卵巣と卵巣管の問題。絡刺、火鍼、骨針

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※三角筋が硬いと、臀部の筋肉も硬い。肩中穴を使うと、臀部の筋肉も柔らかくなる。

③前腕三其(列欠三穴)  列欠と2寸(もしくは1寸)間隔に計3穴。
       子宮の問題

④手二重   卵巣管

⑤石門・関元・中極と、この三穴の外方1寸。

石門と石門の外方1寸   卵巣
関元と関元の外方1寸 卵巣管
中極と中極の外方1寸 子宮

※石門を刺針すると不妊症になるという話があるがウソ。石坂流では不妊症に石門を使用する。
※男の場合は、前立腺の治療に使用できる。

⑥次髎三穴 火鍼か刺絡
次髎の上方1寸 卵巣
次髎 卵巣管
次髎の下方1寸 子宮

※男の場合は、不妊症と前立腺の治療に使用できる。

⑦公孫三穴
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公孫      卵巣
然谷      卵巣管
照海      子宮

⑶ 婦科疾患各論
婦科疾患の場合、まず主穴を配穴する。その上で、各疾患別に配穴を行う。
①生理痛

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海豹穴(五虎穴に相応する)
取穴:母指IP関節とMP関節の中点。脾経上。
倒馬鍼の方が効果あり。

②膀胱炎
⒜ 海豹穴+木婦穴
⒝ 三陰交から照海までのラインを刺絡。
⒞ 曲池・血海(膀胱炎になり易い場合)

③生理不順
前腕三其

④閉経
⒜ 仙骨を刺絡
⒝ 三陰交から照海までのラインを刺絡

⑤逆子
⒜ 至陰(右)
※至陰で治らない場合は、少沢(奇治)
⒝ 大敦・少商

⑥母乳が出にくい
⒜ 少沢
⒝ 少商
※少沢で治らない場合は、至陰(奇治)

⑦母乳から血が出る

⒜ T2~T6を刺絡(肺心肝脾腎の熱に効く)  →原因は腎の熱  
⒝ 中衝(刺絡) →乳中(陽明) →厥陰

⑧不妊症
姐妹穴

⑨子宮筋腫
公孫

⑩目眩
生理前 腎四針
生理中 脾四針
生理後 肝四針

⑷ 石坂流
石坂流伝承:石坂元(京都)⇨蘇錦全(台北)⇨ 王法明(文山)⇨王醫仙(文山,現東京)。
①まず仙骨を刺絡する
②不妊症には石門
③下腹部を刺絡(火鍼でもよい)



⑸ 陰陽鍼

大腿脾穴と腎関、大腿腎穴と足三里

生殖器の腎四針にも負けない効果がある。すべての婦人科系疾患と虚証に効果あり。


2.臨床
⑴ 小児麻痺
合谷・湧泉・後渓・大椎・百会・人中
肩中穴の上下とその左右(間隔は2寸5分ほど。計9穴)を刺絡

⑵ 統合失調症
内迎香
統合失調症は陽明経の病気で、便秘がある。 →大承気湯

⑶ 更年期障碍
肝四針、大腿肝穴、腎四針、T2~T6を刺絡(のぼせに)

⑷ 十二指腸潰瘍
公孫刺絡、手足二金、腸門・六腑(舌苔が厚い場合は便秘がある)、足三里の上下の圧痛点
熊胆



2016年5月15日 前期洋クラス第2回

2016年5月15日 前期洋クラス第2回

1.針經標幽賦

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①二陵、二蹻、二交,似續而交五大。兩間、兩商、兩井,相依而列兩支。

①二陵(陰陵泉・陽陵泉)、二蹻(陰蹻(照海)・陽蹻(申脈))、二交(三陰交、陽交は、お互いに連絡しながら、五体と繋がっている。両間(二間・三間)、両商(少商・商陽)、両井(天井・肩井)は、それぞれお互いに手足の拠り所になっている。

②足見取穴之法,必有分寸。先審自意,次覲肉分。或伸屈而得之,或平直而安定。

②一般に取穴の方法は、必ず規定の骨度法で行うべきである。まず自分の頭で取穴の部位を推測し、次に、患者の体を観察して取穴部位を決めるべきである。患者の関節を屈伸させたり、あるいは、患者の体を真っ直ぐに安定させたまま、取穴を行うべきである。

③在陽部筋骨之側,陷下為眞。在陰分郄膕之間,動脈相應。

③関節を伸ばした場合は、筋骨の傍らや陥凹部に取穴した方が正確である。関節を曲げた場合は、くぼんだ部分や、動脈の拍動部位※が取穴部位としてふさわしい。

*陽部:手背、背部などの陽の部位、陰部:手掌、腹部などの陰の部位という説もあり。
※動脈拍動部だけでなく、浮脈がある部位もよい。

④取五穴用一穴而必端。取三經用一經而可正。

④(治療しようとするポイントの周辺から)五穴取穴し、その中から一穴選べば間違いはない。(治療しようとするポイントの周辺から)並列する三本の経絡を診断して、そのうち一本を選べば、正しく治療することができる。

⑤頭部與肩部詳分。督脈與任脈易定。

⑤頭部と肩甲部は(湾曲しているので)、詳細に区別し取穴しなければならない。督脈と任脈は(正線上にあるので)、簡単に取穴できる。

⑥明標與本,論刺深刺淺之經。住痛移疼,取相交相貫之徑。

⑥経絡の標と本の関係を明確にして、深刺、浅刺の使い分けを区別すべきである。固定性の疼痛や非固定性の疼痛は、経絡が集まるところを刺す。

※遠位を治療する場合は深く刺し、近位を治療する場合は浅く刺す。
※住痛:血症⇨絡刺、移疼:気証⇨経刺

⑦豈不聞,臓腑病,而求門、海、兪、募之微。經絡滯,而求原、別、交會之道。

⑦どうして質問しないのか、臓腑病は、「門」「海」「兪」の文字を使っている経穴や墓穴に求め、経絡の阻滞は、原穴、絡穴、交会穴を使うのが常道であることを。

※臓腑病:体幹、経絡病:手足を治療する。

⑧更窮四根三結,依標本而刺無不痊。但用八法五門,分主客而針無不效。

⑧さらに四根(四肢)、三結(面部、胸部、腹部)を研究し、標本理論に基づいて刺せば、治療出来ないものはない。ただ五門八法(霊亀八法)を用いて、主客関係を区別して刺せば、治療効果がでないことはない。

⑨八脈始終連八會,本是紀綱。十二經絡十二原,是為樞要。

⑨奇形八脈は、八脈交会穴から始まり、終わり、繋がっているので、八脈交会穴は奇形八脈の根本となるものである。十二原穴は、十二経絡と連絡しているので、最も大切な経穴である。

※八脈交会穴にこだわらず、その属している経絡の経穴を使ってもよい。
ex.内関(心包経)・公孫(脾経) → 心関(心包経)・腎関(脾経)

⑩一日取六十六穴之法,方見幽微。一時取十二經之原,始知要妙。 ⑩日々、六十六穴之法(子午流注のこと)を用いれば、子午流注が神秘的で知りがたいことであることが分かる。時間通りに十二原穴を用いれば、子午流注が奥深いものであることを知ることができる。

※十二原穴よりも、基本十五穴を使いこなした方が良い。
⑪原夫補瀉之法,非呼吸而在手指。

⑪本来、補瀉の方法は、呼吸だけでなく、手技にも重視すべきである。
※扁鵲の補瀉

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補法:いったん刺した後、さらに深く刺す
瀉法:いったん刺した後、浅い位置に針を引く

董師の倒馬鍼は、扁鵲の補瀉よりも効果が高い。補瀉は関係ない。

⑫速效之功,要交正而識本經。交經繆刺,左有病而右畔取。瀉絡遠針,頭有病而脚上針。

⑫治療効果の速効を得るためには、病んでいる経絡だけでなく、表裏関係にある経絡(ex.肺経と大腸経)も認識しておく必要がある。経脈を交差させて、左に病があれば、右を刺すというのが繆刺である。頭に病がある時に、脚を刺絡するのが、遠針である。

※上の病を治す下の穴:絶骨、腎関、条口
 下の病を治す上の穴:合谷、中渚、肩中
全身を治す穴:少府・梁丘、手足二金(リウマチの場合は五虎穴)

⑬巨刺與繆刺各異,微針與妙刺相通。

⑬巨刺と繆刺は、(経刺と絡刺の)違いがあるが、(健則を刺すという点で)、相通じるものがある。


⑭觀部分,而知經絡之虛實,視沉浮,而辨臓腑之寒溫。

⑭体表部を観察することにより、経絡の虚実を知ることができ、沈浮(気血の盛衰)を視ることができ、臓腑の寒熱を弁証できる。

顔の観察
目から上:上焦
鼻の位置:中焦
鼻から下:下焦

手掌の熱:臓腑
手背の熱:経絡

⑮且夫先令針耀,而慮針損。次藏口內而欲針溫。目無外視,手如握虎。心無內慕,如待貴人。

⑮針を打つときは、必ず針はピカピカに綺麗にして、針に損傷がないように注意し、次針を口に含んで、針を温めるべきである。よそ見をしないで、虎の尾を掴むように針を握り、あれこれ余計なことを考えず、貴人を迎えるように患者を待つべきである。

※針を口に含むのは昔の習慣。危険なのでしない方が良い。酒精綿で擦った方が良い。

⑯左手重而多按,欲令氣散。右手輕而徐入,不痛之因。
⑯取穴に使う左手は、前揉捏・後揉捏のために力を入れて使い、気血の発散を促す。針を持つ右手は、針を刺入するために軽く力を抜いて使うことにより、刺針時の痛みがでないのである。

⑰空心恐怯,直立側而多暈。背目沉掐,坐臥平而沒昏。


⑰(刺針時に、患者が)空腹である、心が「大恐」「大驚」の状態なのに、直立あるいは側臥位で刺針すると、瞑眩がでることが多い。「大恐」「大驚」の患者の心を落ち着かせて、平穏に座らせ、あるいは寝かせて刺針すれば、瞑眩がでることはない。

⑱推於十干十變,知孔穴之開闔。論其五行五臓,察日時之旺衰。伏如橫弩,應若發機。

⑱十干と霊亀八法を計算すれば、経穴の効く時間を知ることができる。五行と五臓の関係を照らし合わせれば、気血の盛衰の時間を知ることができる。気血が伏せている経穴に針を刺しても、それは弩弓を横に置いたようなものである。時間に対応した経穴を刺せば、それは放たれた弓矢のようなものである。

⑲陰交陽別,而定血暈。陰蹻陽維,而下胎衣。

⑲三陰交と陽交は、産後の目眩を収めることができる。陰蹻(照海)と陽維(外関)は、胎盤が下りないのを治すことができる。

⑳痹厥偏枯,迎隨俾經絡接續。

⑳麻痺、厥冷、偏枯(半身不随)は、呼吸や迎随の補瀉により、経絡の接続を図る。

※大接経の方が良い。
⑴大腿五穴を使用する。
⑵男は左大腿から、女は右大腿から打ち始める。
⑶左→右→左→というように、左右交代で打つ。
⑷五行の相生関係のサイクル順に打つ。
ex1.季節が立夏(心):心→脾→肺→腎→肝
ex2.風邪(肺):肺→腎→肝→心→脾

㉑漏崩帶下,溫補使氣血根依歸。

㉑不正出血や帯下は、温補の方法により気血を安定させる。

※隠白(灸)

㉒靜以久留,停針待之。

㉒(⑲~㉑の疾患の治療は)安静に長く針を留め、手技を停止して気機の回復をを待たねばならない。

※重い病気は30分以上針を置く。一日中頭皮針をするのも効果が高い。

㉓必準者,取照海治喉中之閉塞。端的處,用大鐘治心內之呆癡。

㉓照海※1は、咽の閉塞感の治療に確実である。大鐘は、意識朦朧とした状態※の治療に的確である。

※1 照海:刺絡or火鍼
※2 呆:痴呆、癡:依存症の状態


㉔大抵疼痛實瀉,癢麻虛補。體重節痛而兪居,心下痞滿而井主。

㉔おおよそ疼痛は実証なので瀉法を用い、痒みと麻痺は虚証なので、補法を用いる。体重節痛は(五兪穴)の兪穴で治し、心下満は井穴が主る。

㉕心脹咽痛,針太衝而必除。脾冷胃疼,瀉公孫而立愈。

㉕胃酸逆流※1には、太衝に針すれば必ず止まる。脾胃が弱って冷たいものを飲みたくない状態※2は、公孫を瀉法すれば立ち所にに癒える。

※1:食道には太白も効く。
※2このような状態は、虚証。通常補法をするところを瀉法するのは、いわゆる反治。まず邪気を除き、それから正気を回復する(去邪扶正)。さらに足三里(灸)を加えるとよい

㉖胸滿腹痛刺內關,脇疼肋痛針飛虎。

㉖胸悶・腹痛には、内関を刺し、脇肋部の疼痛には、支溝に針を打つ。

㉗筋攣骨痛而補魂門。體熱勞嗽而瀉魄戶。

㉗破傷風には、魂門(筋縮・肝兪)を補法する。結核には魄戶(身柱・肺兪)を瀉法する。

㉘頭風頭痛,刺申脈與金門。眼癢眼疼,瀉光明與地五。

㉘頭風(急性の頭痛)や慢性の頭痛には、申脈と金門を刺す。眼が痒い、眼が痛い場合には、光明と地五会を瀉法する。

㉙瀉陰郄,止盜汗,治小兒骨蒸。刺偏歷,利小便,醫大人水蠱。

㉙陰郄を瀉法すると、寝汗を止め、子供の消化不良を治すことができる。偏歴を刺すと、大人のむくみを治すことができる。


㉚中風環跳而宜刺,虛損天樞而可取。

㉚脳卒中の麻痺には環跳を刺すべきであり、消化不良的な虚証には天枢が望ましい。

2.刺針法と心構え

中国武術は、気候風土の違いにより、北部と南部で大きな違いがある。
同じように、刺針法にも違いがある。
北:ゆっくりと、回旋させずに刺す。 ⇨ 夏・秋の季節に向いている。
南:素早く、回旋して刺す。  ⇨ 春・冬の季節に向いている。

内家拳の動きには、以下の特徴があり、練習すると針の技術の向上に役立つ。
   太極拳:掤 形意拳:崩 八卦掌:翻

初心:治療前に恐怖心をなくす。
無心:治療時に、余計なこと(ex.自分の腕前を見せてやろう、お金を儲けてやろう)を考えない。
残心:治療が終わった後も、常に治療する時の心構えを残しておく。

3.子午流注の源と易  非公開

4.易針  非公開

2016年5月1日 前期海クラス第2回

2016年5月1日 前期海クラス第2回

1.四大総穴
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⑴ 基本
合谷・列欠・足三里・委中
単にこの4つの経穴が重要という意味ではない。
①手足(肘や膝から下方)の経穴で、すべての疾患を治療できる。
②四大総穴の近くにある経穴はすべて重要な穴である。
 ex.合谷だけでなく、中手骨間にある経穴はすべて重要。 
列欠だけでなく、手首周辺にある経穴はすべて重要。

⑵ 四大総穴の代表的配穴
合谷・太衝、合谷・足三里、合谷・復溜
列欠・照海、列欠・豊隆
手三里・足三里、曲池・足三里(経気(衛気+栄気)の調整)
尺沢・委中、中渚・委中・人中(腰痛)

2.八卦穴(奇脈八穴)
⑴ 基本
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・内関・公孫
・列欠・照海
・外関・足臨泣(外関よりも支溝、もしくは支溝透外関の方が良い)
・後渓・申脈(申脈よりも絶骨の方が良い)

内関・公孫は消化器(陽明)に効く。
素問陰陽別論篇(七):三陰三陽経脈的病変
 「二陽之病發心脾」 陽明(胃・大腸)の病は心と脾から発する。


⑵ 応用
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解剖学的に相応の部位を配穴に加える。
内関・公孫・魚際・三陰交 (内関⇔三陰交、公孫⇔魚際)
列欠・照海・大陵・六腑       (列欠⇔六腑、照海⇔大陵)
支溝・足臨泣・中渚・絶骨 (支溝⇔絶骨、中渚⇔足臨泣)
後渓・絶骨・支溝・束骨 (後渓⇔束骨、絶骨⇔支溝)

3.易針 非公開
4.馬丹陽天星十二穴
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馬丹陽:全真教2代目教主。龍門鍼灸の始祖。

〔担法〕
合谷・曲池(風邪)
委中・承山(腰痛、痔)
内庭・足三里(歯痛、腹痛)
陽陵泉・環跳(腰痛)

〔截法〕
通里・列欠(統合失調症)
太衝・崑崙(脚の疲れ)
(截法の場合、例えば、右手に通里を刺した場合は、列欠も右手に刺す)
※担法、截法ともに魚の網での取り方
担法は、すべて同一経絡上に配穴する。截法は、近くの経穴を配穴する。
これらの方法が進化したのが、董師の倒馬鍼。


〔通里の刺鍼法〕
精神病:透神門
心臓病:透大陵
※五官の異常(感覚神経の異常)

原穴を使う。
嗅覚異常:太淵
聴覚異常:太渓
味覚異常:神門・太白
視覚異常:太衝

5.董師奇穴の特徴
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⑴骨針
①骨に直刺する(痛みの治療)
②骨に沿って刺す(機能性の障碍の治療)
⑵動針
運動針。例えば肩が痛い場合、腎関を刺針後、肩を動かしてもらう。

⑶多針
倒馬鍼。近くに刺す。

6.瀉法
排泄物のルートは汗、小便、大便、嘔吐の4つ。鍼により、これらを促進させる。
①汗法:合谷・復溜
②便法:腸門・六腑
③尿法:中渚・肝関
④吐法:内関・巨闕

7.刺針時における立ち方
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患者の左側に立つ。
〔施術者が男の場合〕
①左足を前に出して刺す → 補法
②右足を前に出して刺す → 瀉法
③右足・左足が同じ位置 → 平法

8.針の深さ
針体の長さを3等分して、刺針の深さにより、効かせる経絡を使い分ける。
①浅い位置:太陽
②中間の位置:少陽
③深い位置:陽明
例:腰の側面が痛い場合は、少陽の深さに刺す。

9.臨床
⑴ ぎっくり腰
木火二穴・支溝(董師の配穴)
慢性の腰痛には効果なし。

⑵ 捻挫
五虎小節

⑶ 不正出血
其門穴・其角穴・其正穴
⑷ 医原病
少府・梁丘
例:針を刺して、気分が悪くなった。針を刺したのが
①下肢の場合:少府
②上肢の場合:梁丘

10.背部兪穴の取穴法
肩甲骨下角:膈兪
腸骨稜上縁:大腸兪
膈兪と大腸兪の中点:脾兪
脾兪と膈兪の中点:肝兪
脾兪と大腸兪の中点:腎兪
膈兪と大椎の中点:厥陰兪
厥陰兪の椎骨1つ上:肺兪
厥陰兪の椎骨1つ下:心兪

・胃兪の取穴法
脾兪の椎骨一つ下(→「脾胃」という言葉と同じ順番)
・胆兪の取穴法
肝兪の椎骨一つ下(→「肝胆」という言葉と同じ順番)

2016年4月17日 前期洋クラス第1回

2016年4月17日 前期洋クラス第1回


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1.竇太師(竇漢卿)『鍼経指南』
代表的なもの:標幽賦、通玄賦、八脈穴

2.鍼灸第一賦(標幽賦)
標:説明 幽:奥義  → 鍼灸の奥義を説明する歌という意味

①拯救之法,妙者用鍼。察歳時於天道,定形氣於予心。 
②春夏瘦而刺浅,秋冬肥而刺深。
③不窮経絡陰陽,多逢刺禁,既論臓腑虚実,須向経尋。
④原夫起自中焦,水初下漏。太陰為始,至厥陰而方終。穴出雲門,抵期門而最後。正経十二,別絡走三百余支。正側偃伏,気血有六百余候。

①人を助ける方法で、プロは針を使う。天の四季や時間を観察し、患者の体型や気の量を予め心に留めて置く(→体質と病状を把握しておく)。

②春や夏、痩せている患者の場合は、浅く刺す(気は浅い位置にあるため。新病の場合も。)。秋や冬、太っている患者の場合は、深く刺す(気が深い位置にあるため。久病の場合も。)。

③経絡、陰陽を勉強しない者は、刺してはいけない所を刺してしまう(痛いからといって)。既に論じたように(経絡をきちんと勉強して)臓腑や虚実は、必ず経絡に尋ねなけらばならない。

鍼灸:経絡によって臓腑を治療する(外から内へ)
漢方:臓腑によって経絡を治療する(内から外へ)


④気は中焦を元に起こり、時間によって流れる(昔の時計は水時計)。太陰(肺)に始まり、厥陰(肝)に終わる。穴でいえば、雲門から始まり、期門で終わる(→斗合人統)。正経、別絡に、経穴は300余(361穴)、左右併せて600余である。
※「門」がつく経穴はすべて勉強した方が良い(沢田先生)


Q:なぜ気は肺から始まるのか?
A:天(→子)、地(→丑)、人(→寅)から始まる。
※人は鶏がなく頃、目が覚める。胎児の時は、子から始まる。出生と同時に呼吸するようになるので、肺から始まるようになる。

⑤手足三陽,手走頭而頭走足。手足三陰,足走腹而胸走手。要識迎随,須明逆順。

⑤手足の三陽は、手から頭に走り、頭から足に走る。手足の三陰は、足から腹に走り、胸から手に走る。補瀉迎随の方法を把握することが必要で、経絡の走行の方向を知っておくことが必須である。
※経絡の流注

手の三陰:胸から手 手の三陽:手から頭 足の三陽:頭から足 足の三陰:頭から腹

本当に瀉法をしたければ、手の三陰(尺沢)、足の三陽(委中)。
本当に補法をしたければ、手の三陽(合谷、中渚)、足の三陰(血海、大腿肝穴)。
※経絡の流れる方向に刺針するのが補法。流れる方向の反対に向けて刺針するのが瀉法。ただし、これよりも扁鵲の補瀉の方が良い。

⑥況夫陰陽,氣血多少為最。厥陰、太陽,少氣多血。太陰、少陰、少血多氣。而又氣多血少者,少陽之分。氣盛血多者、陽明之位。
⑥(経絡で)最も重要なのは、陰陽、つまり気血の量である。厥陰経と太陽経は、気が少なく血が多い。太陰経と少陰経は、血が少なく気が多い。また気が多く血が少ないのは少陽経である。気も盛んで血も多いのは、陽明経である。


気少血多   厥陰経 太陽経    ⇨ 刺絡
気多血少 太陰経 少陰経 少陽経  ⇨ 灸
気盛血多 陽明経    ⇨ 針麻酔

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⑦先詳多少之宜,次察應至之氣。軽滑慢而未来,沈澀緊而已至。既至也,量寒熱而留疾。未至也,據虚実而候気。

⑧氣之至也,若魚呑鈎餌之沈浮。氣未至也,似閑處幽堂之深邃。氣速至而効速,氣遅至而不治。


⑦先に気血の量を理解し、次に針感を観察すべきである。針感が軽い、滑ら、緩んでいる場合は、まだ得気がない。沈む陽に重い、凝り固まったように渋る、筋が緊張している場合は、得気があるということである。既に得気があるなら、寒証の場合は針を留め、熱証の場合は速刺速抜する。
得気がまだない場合は、虚実により気を補瀉する。

⑧得気がある時は、魚が釣り針の餌に食らいついたような浮き沈みの感覚がある。得気がない時は、閑古鳥が鳴いている御堂のようである。得気が速く出れば病も速く治り、遅ければ、治りも遅い。


⑨觀夫九針之法,毫針最微,七星上應,衆穴主持。

⑩本形金也。有蠲邪扶正之道。短長水也,有決疑開滯之機。定刺象木,或斜或正。口藏比火,進陽補羸。循機捫塞以象土,實應五行而可知。


⑨古代九鍼の中で、毫鍼が最も良く使う。北斗七星の璇璣のように、全身の経穴を主る(→北斗七星は天の時間を表示する、天の中心的存在。毫鍼も北斗七星のように、針の中心的存在である)。

⑩針は五行では基本的に金に属する(針は金属製だから)。邪気を払い正気を回復する。長針・短針があるので、水のようである(水の形は変化する)。気血の凝滞(不通)を解決できる。針を刺した姿は木に似ているので、木に属する。直刺や斜刺がある(→樹木は、縦横に伸びる)。針は針柄を口に挟んで使う(昔の習慣。針が温まる)ので、火に属する。陽気により虚を補うができる。抜針後、後揉捏を行う時の感じは、土のようである。まさに毫鍼で五行に対応できるのは明らかである。
※針は五行全ての性質があるので、五臓を治療できる。
※一般的に、金属は邪気を払う性質がある。ステンレス製よりも金針、銀鍼の方が邪気を払う力が強いが、気の消耗も激しくなるので、使用しない方が良い。
※智慧がない患者には腎を治療する(智者楽水、仁者楽山:智者は水が好き、仁者は山が好き)。

⑪然是一寸六分,包含妙理。雖細擬於毫髮,同貫多歧。可平五臓之寒熱,能調六腑之虛實。

⑫拘攣閉塞,遣八邪而去矣。寒熱痛痹,開四關而已之。

⑪そしてこの1寸6分(の毫鍼)は、霊妙な理を含んでいる。髪の毛のような細さといえども、(経絡、五臓六腑、八邪、四関など)多岐にわたり貫くことができるのである。五臓の寒熱を治め、六腑の虚実を理めることができるのである。

⑫拘攣や閉塞(現代風に言えば、運動障碍と感覚障碍)は、八邪を追い払えば治る。寒熱痛痹の各症状は、四関を開けば治る。
※通説では、八邪=八方位からくる風邪、四関=合谷・太衝
重い病気:八邪=体幹の穴   軽い病:四関=手足の穴


⑬凡刺者,使本神朝而後入。既刺也,使本神定而氣隨。神不朝而勿刺,神已定而可施。

⑭定脚處,取氣血為主意。下手處,認水木是根基。

⑬おおよそ針を刺す者は、患者の精神が安定(治療の受け入れができていること)してから針を打つべきである。既に刺してしまった後なら、精神が安定してから運針すべきである。精神が安定していないなら針を打つべきではない。精神が安定してから刺針すべきである。

⑭治療の基本は、気血や腎・肝である。
気≒神=頭・頚   血≒膈兪(血会穴)=体幹  水=陰(足) 木=陽(手)
※肝腎を中心に治療するのは、湯液の思想。したがって、治療の基本は、頭、体幹(体質の治療)、手足(病状の治療)と考えるべき。

⑮天地人三才也,湧泉同璇璣百會。上中下三部也,大包與天樞地機。陽蹻陽維并督脈,主肩背腰腿在表之病。陰蹻陰維任帶衝,去心腹脇肋在裡之疑。

⑮天地人の三才穴は、百会、湧泉、璇璣である。上中下の三部穴は、天枢、地機、大包である。陽蹻脈、陽維脈、督脈は、肩、背、腰、脚などの表証を主る。陰蹻脈、陰維脈、任脈、帯脈、衝脈は、心、腹、脇肋などの裏証を主る。


百会:天(最上部にあるから) 
湧泉:地(最下部にあるから)  
璇璣:人(人にとって呼吸することは大事。璇璣は北斗七星の中心)


天枢:天  
地機:地  
大包:人(①脾経:人にとって食べることも重要 ②人は天地の中にいる(包まれている)
⇨ツボの名前には意味があるので、部位でなく、名前も勉強した方が良い、という子を言いたい。

〔天地人の病症〕 天:頭 地:足 人:手
天:時間   ⇨頭を治療
地:空間、食べ物  ⇨足を治療
人:動静、考えすぎ ⇨手を治療


2.奇形八脈  非公開
3.脈診一指禅(龍門鍼灸) 非公開


2016年4月3日 前期海クラス第1回

2016年4月3日 前期海クラス第1回

1.鍼灸三要

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鍼灸に必要なのは、①穴 ②技 ③気 の3つ。
穴:死記(暗記)と活用が必要。
気:生活管理(睡眠、食事、運動、排泄、ストレスをためない)が重要。
〔気の鍛錬〕
朝と夜に鍛錬する。南を向く。前後のスワイショウのように手を振る。掌は下向きで、手を振ると同時に、軽く膝を屈伸する。

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2.十五要穴(体の部位)
Ⓐ前身  
列欠 合谷 足三里 陰陵泉 三陰交 ◎公孫

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Ⓑ 後身
神門 ◎後渓 委中 束骨(崑崙) 太渓

Ⓒ 側身

内関 中渚 ◎絶骨 太衝〔梁丘、血海〕
◎は最重要穴
〔使い方〕
ex.前の部位の病気(臓腑、経筋)の時問題がある場合
①公孫を優先して刺す。
②急性病の時は陽明(合谷・足三里)、慢性病の時は太陰(列欠・陰陵泉・・三陰交・公孫)を刺す。
③全てを刺す。

3.十五要穴(主治)
⑴ 列欠
①呼吸器 ②任脈 ③頚・頭
列欠は道教の稲妻の神様の名前。電気が走るような症状(ex.偏頭痛)に効く。
※豊隆は雷の神様の名前。痰の病気(ex.精神不安定)に効く。
稲妻・雷の組み合わせで、列欠・豊隆の配穴もよい。

⑵ 合谷
①上半身 ②痛証 ③五官

⑶ 足三里
①下半身 ②免疫 ③消化器
消化器:胃腸

⑷ 陰陵泉
①消化器 ②肩、四肢 ③肉会穴 ④検血異常
消化器:膵臓、十二指腸、肝、胆

⑸ 三陰交  
①泌尿器 ②生殖器 ③痹症
痹症:風痹(肝)、寒痹(腎)、湿痹(脾)

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⑹ 公孫
①前身 ②消化器 ③衝脈
※衝脈:液体の量をコントロールを主る。
  ⇨ 貧血、高血圧、むくみなど。

⑺ 神門
①味覚異常 ②心の病気 ③不眠 ④出血
※原穴の使い方 → 五主の病気に使う。
太衝:目  神門:味覚 太白:口 太淵:鼻 太渓:耳

⑻ 後渓
①後身 ②マラリア
※マラリアの配穴:大椎・後渓・間使・絶骨

⑼ 委中
①腰痛 ②血郄 ③邪気過剰(実証)
血郄:委中は、五臓六腑の兪穴がすべて集まるところ。
実証:血圧、体温、心拍数が上昇する場合。

⑽ 束骨
①後身 

⑾ 太渓
①生殖器 ②泌尿器 ③聴覚異常

※生殖器、泌尿器には、三陰交の方が効く。

⑿ 内関
①救心 ②脳下垂体 ③循環器
※救心:動悸、息切れ、目眩
※脳下垂体の配穴:人中・合谷・内関

⒀ 中渚
① 肝臓② 疲倦(倦労)③目・肩・腰
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⒁ 太衝
①視覚異常 ②血圧 ③歩行異常 ④鼻の病気

⒂ 絶骨
①側身 ②骨髄(血液)③ 運動障碍 ④目の病気

3.脳の疾患の配穴
人中・合谷・内関・湧泉

4.難聴
突発性:合谷・聴会・翳風
慢性:風市・腎関

5.手技

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補法:得気深針(得気内針) →鍼を刺し、さらに深い位置に刺し、手技を行う。
瀉法:得気浅針(得気外針) →針を刺し、針を引いて浅い位置に戻し、手技を行う。
平法:得気平針  →深くもなく浅くもない位置に針を針を刺し、手技を行う。